このページの解説と分析は、AIの支援を受けて個人の勉強用に整理したものです。誤りを含む可能性があります。正確な情報は公式の発表をご確認ください。
HOW TO READ

このページの読み方

見た目の素材ではなく、建物として働く素材を読む

範囲扱う素材建材か、外装か
01支える素材竹・炭素繊維・紙・植物由来の樹脂
02囲う素材土・麻・菌糸体
比較素材を並べる自然素材と新素材
分析新しい建材の可能性筆者の分析

「万博が示した建築の可能性」の3つめのテーマです。木・膜のページと同じく、素材を軸に会場を横断して読みます。分類と最後の分析は筆者によるものです。

SCOPE

このページで扱う素材

扱う:建物として働く素材(建材)

荷重を支える構造材と、空間を囲う壁の材料。竹・炭素繊維・紙のドーム、土や麻、菌糸体の壁。

扱わない:外装・装飾の素材、木そのもの

建物の表情をつくる外装(EARTH MART の茅、マレーシア館の竹、サウジアラビア館の石張りなど)。木と膜は、それぞれのページで扱っています。

01

支える素材

竹・炭素繊維・紙・植物由来の樹脂で、ドームを架ける

大きな屋根を架ける構造材は、これまで鉄やコンクリート、木が担ってきた。BLUE OCEAN DOME は、竹・炭素繊維・紙という3つの素材で、それぞれ別のドームを架けた。館内のパネルは「木やコンクリートはリサイクルできず、仮設建築には杭も必要になる。会期後に廃棄物が生じない建築を、新しい建材で実現した」と説明している。会場の一角には、植物由来の樹脂を3Dプリントした小さな建物もあった。

支える

BLUE OCEAN DOME

坂茂建築設計(建築家 坂茂)、出展 ZERI JAPAN

海の環境をテーマにした館。入口の竹のドームA、中央の炭素繊維のドームB、出口の紙のドームCが連なり、来場者は3つの素材を順にくぐり抜ける。どのドームも、骨組みそのものを館内から見上げられる。軽い素材で組んだため杭が要らず、解体しやすい構造として、会期後は別の用途で再利用することが前提になっている。

構造材
竹集成材、CFRP、紙管(交点は杉 CLT の木の球)
基礎
軽さを生かし、杭を打たない
閉幕後
解体して再利用する前提。紙管のドームCはモルディブのリゾート施設として再利用(館内パネル・設計者サイト)
ドームは不燃の膜で覆われている。膜の建築は「膜と軽さ」へ →
DOME A竹
構造材
竹集成材
形式
曲げた竹集成材のドーム
大きさ
直径19m

高知県産の竹を細く割り、蒸して接着・圧縮した板を、曲げながら8層(厚さ48mm)に重ねる。生の竹ではなく集成材にしたのは、日本の建築基準を満たすため。荒れた竹林の竹を使う。

DOME B炭素繊維
構造材
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)
形式
パイプを格子に組んだシェル
大きさ
直径42m

直径100mm・厚さ5.6mmの CFRP パイプを直交させて2層に組み、結束バンドで留める。膜を固定する鋼管も構造に加える。重さは鉄の約1/5で強さは約4倍(館内パネル)。ドームの重さは掘った土より軽く、杭を打たずに建てられた。

DOME C紙
構造材
紙管(再生紙)
形式
紙管の立体トラス
大きさ
直径19m

外側に外径137.8mm、内側に114.3mm の紙管を使い、交点を直径300mmの杉 CLT の木の球でつなぐ。坂茂が1985年から開発してきた素材で、2000年のハノーバー万博の日本館でも使った。閉幕後はモルディブのリゾートの施設として再利用される(館内パネル・設計者サイト)。

館内のパネル

3つの素材それぞれに、解説パネルが置かれていた。クリックすると拡大します。

館内のパネル「建築の特徴」。竹・炭素繊維・再生紙の3つのドーム
パネル「木よりも成長が早く強い竹」
パネル「世界初・カーボンファイバー(CFRP)建築」
パネル「世界に根付く紙の建築」。右上に「大阪・関西万博からモルディブへ」
支える囲う

森になる建築

竹中工務店(設計・施工)

植物由来の生分解性樹脂(酢酸セルロース)を、会場に置いた3Dプリンターで一層ずつ積んで構造体をつくった。外側には、植物の種を漉き込んだ和紙「シーズペーパー」を貼り、そこから草木が芽吹く。解説板の言葉は「万博を終えた後は、ごみになるのではなく、時間をかけて土に還り、『森になる建築』」。建てるときから、朽ちて森になるまでを設計した建物である。会期中は休憩所として使われた。

構造材
3Dプリントした酢酸セルロース(植物由来の生分解性樹脂)。仮設建築物として建築確認を受けた
外装・床
種を漉き込んだ和紙、伝統工芸の職人や福祉施設がつくった和紙、植物の種子・苗。床は三和土(土を突き固めた床)
規模
直径4.65m・高さ2.95mの2棟
閉幕後
解体せず、2026年4月に兵庫県川西市の竹中研修所の森「清和台の森」に移設。森の中で分解されていく様子を観察する
02

囲う素材

土・麻・菌糸体で、壁をつくる

壁は荷重を支えなくても、空間を囲い、熱や湿気を調整する建材である。構造を木や鉄に任せ、壁に新しい素材を入れる方法が試された。ドイツ館は自然素材と育てる素材を、若手のトイレ4は土と3Dプリンターを組み合わせた。

囲う

ドイツ館「わ!ドイツ」

LAVA(クリスティアン・チェルシッヒ)

木の部材を組んだ円筒が連なり、らせん状の見学路をつくる。円筒の木の部材の間を埋める壁に、300以上の候補から選んだ素材を使った。ドイツで生まれたヘンプクリート、日本にも通じる古い技術である土(粘土)、そして工場でつくるのではなく「育てる」菌糸体のパネル。館内では壁の素材に「循環型材料」の札を付けて見せていた。

構造
工場でつくった木の部材の円筒。展示とカフェの構造には竹も使う。下部は再利用できる鋼製の基礎で、コンクリートの基礎を最小限にした
壁の建材
土(版築)、ヘンプクリート、菌糸体パネル、ガラスなど
閉幕後
鋼材と木材は取り外して再利用。菌糸体とヘンプクリートは、やがて堆肥にできるとされる(設計時点)
壁の素材分類特徴
土(粘土)自然素材古くからの技術で、日本の土壁にも通じる。湿気を調整する
ヘンプクリート自然素材から生まれた工業製品麻の茎と石灰を混ぜた建材。ドイツで生まれた比較的新しい製品
菌糸体パネル新素材キノコの菌糸で素材を固めたパネル。工場でつくるのではなく「育てる」建材
囲う

トイレ4

浜田晶則(AHA 浜田晶則建築設計事務所)

日本の伝統の土壁を手がかりに、土を3Dプリンターで一層ずつ積み上げた壁で囲う。材料は国内で手に入り、会期後に自然へ還せることを条件に選んだ。土が自立できる形を実験で確かめ、張り出しの限界から形を最適化した。建物は木造で、土の壁は木造の外壁に取り付けている。

材料
土、粘土、硬化剤(酸化マグネシウム)、藁、顔料、海藻糊
つくり方
富山の工場で幅930mm・高さ1,200mmのパネル56枚をプリントし、会場で木造の外壁に取り付けた。ベンチを兼ねたプランターは会場でプリント
閉幕後
材料をすべて自然へ還せることが条件(設計時点)
若手建築家のトライアル「トイレ4」へ →
COMPARE

素材を並べる

ここまでの素材を、「支える/囲う」と「自然素材/新素材」で並べます。多くの素材は、自然素材を加工したものか、新しい技術と組み合わせたものでした。

自然素材を加工して使う新しい素材・技術
支える竹集成材竹を割って圧縮し、重ねて曲げる(ドームA)紙管再生紙を巻いて筒にする(ドームC)CFRP鉄の約1/5の重さで約4倍の強さ。建築の構造に使ったのは世界初と館内パネルは説明する(ドームB)酢酸セルロースの3Dプリント植物由来の生分解性樹脂を積んで構造体にする(森になる建築)
囲う土(版築)突き固めて壁にする(ドイツ館)ヘンプクリート麻と石灰を混ぜる(ドイツ館)菌糸体パネル菌糸で固めて育てる(ドイツ館)土の3Dプリント伝統の土壁の材料を機械で積む(トイレ4)

ほかのページで取り上げた素材

MEANING

新しい建材の可能性

以下は、ここまでの内容をもとにした筆者の分析です。

01

軽さが、基礎を変えた

炭素繊維は鉄より高価で、軽くする必要のない建物にはこれまで使われてこなかった。夢洲は地盤の弱い埋立地で、ふつうは杭を打つ。ドームBは掘った土より軽くつくることで杭そのものをなくした。素材が軽いことの価値が、敷地の条件によって初めて生まれた。ドイツ館の鋼製の基礎や、膜の建物のフローティング基礎と同じく、「地面に重いものを残さない」ことが、仮設の万博建築の共通の課題になっていた。

02

自然素材は、加工されて建材になる

竹は生のままでは建築基準を満たせないため、割って圧縮した集成材にした。土は硬化剤を混ぜて3Dプリンターで積み、紙は巻いて紙管にした。「自然素材か、新素材か」という二分法より、自然素材を工業化して性能をそろえる方向がはっきり見えた。木のページで見た集成材や CLT と同じ流れである。

03

「育てる」「還す」建材

森になる建築は、構造体そのものを生分解性の樹脂でつくり、外装の和紙から草木を芽吹かせた。閉幕後は森へ移され、建物まるごと土に還る過程を観察されている。ドイツ館では菌糸体を「育てる」素材として壁に使い、ヘンプクリートとともに、やがて堆肥にできるとした。トイレ4の土も、会期後に自然へ還すことを条件に選ばれた。壁だけでなく構造まで「還す」素材でつくれることを、森になる建築は小さな規模で示した。建材を、どこから来て、使ったあとどこへ行くかまで含めて選ぶ考え方である。ドイツ館のパネルは、部材を再利用する「工業資材的な循環」と、素材を自然に還す「生物学的な循環」を並べて示していた。

04

見方を広げる問い

今回の素材の多くは、半年の仮設建築だから試せたものでもある。竹を集成材にしたのは建築基準のためで、新しい素材を常設の建物に使うには、法規や認定、耐久性の確認が欠かせない。炭素繊維の値段も課題として残る。紙管が仮設住宅から恒久的な公共施設へ広がったように、万博の素材が会期の外でどこまで使われるか。モルディブへ渡る紙のドームと、森へ移された森になる建築は、その最初の例になるだろう。

参考にした資料

各館の説明は、上の資料をもとにした要約です。閉幕後の情報は設計時点・報道時点のもので、変わることがあります。